なんであたしの横にあなたがいないの







「なんであたしの横にあなたがいないの」














黒い椅子の上に三角座りして、裸足の凍えた足をこすり合わせる。

体はゆらゆらと横に動かして。

気がつくと、いつの間にかこの格好になっていた。


「寂しくなんかないわ。」


とぽつりと呟いてみたりする。

ベース音が心臓に響いて痛いくらいの音量で、音楽をかけている。

ちょっと高めの声。

英語なんてわかんないけど、適当に歌って、首を縦に動かす。

「不思議ね、こんなに大きい音なのに耳より先に心臓が痛くなるなんて。」

ぽっかり空いたところに心配するかのように、入ってくる。

「なんなんだろう。」

と、目をつぶってみる。

もちろん涙は出てこない。

だって何が原因かわからないから。

でも、なんだろうこの感覚。

このぽっかり空いた感覚。


とくん、とくん、って鳴る心臓にちょっと空いた感覚。

手がかりかわからないけど、今わかっていることはあたしに今日までの記憶がないこと。

思い出せないんじゃなくて、思い出そうとしたくない。


なんなんだろう。


気がつくと、あたしは三角座り。

かすかに残るあたし以外の誰かの匂い。

いつのまにか流れている音楽。

右手には、歌詞カード。

涙の痕がちょっとあるわ。


なんだろう。

なんなんだろう。


とくんとくんとくん。


あぁ。

そうか、そうだった。

そうゆうことか。

笑っちゃうけど、涙しか出てこない。

わかったわ。


なんでこんなに寒いのか。

なんでこんなに寂しいのか。

なんでこんなに泣きたいのか。


なんでこんなにぽっかり空いているのか。




「なんであたしの横にあなたがいないの」































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