俺ん家の近くのガレージにて







「俺ん家の近くのガレージにて」















口からでたどろどろしたなんかをトイレに流す。

水が流れる音とともに消える汚物。

「昨日は飲みすぎた」と一人呟く。


会社の上司に付き合って。

先輩がどうしてもって。

そんな大人な事情は僕にはない。

なぜなら僕は未成年だから。

昨日は昔からの友達たちと、自動販売機で買った缶チューハイを飲んでいたのである。

ただ飲み明かしたのではなく、うだうだしかなんかを吐き出したかったのだ。





「例えば俺が、もし。もしだよ。死んだとしたらお前らどーする?」

「泣く。」

「泣き喚く。」

「立ち尽くす。」

三つの口から一言一言小刻みに唇を動かして、言う。

「それ聞いて安心したわ。お前ら、やっぱダチだな。」

髪の毛をちょっとねじる。

「なんだよ急に。気持ち悪りぃな。」

「んじゃぁ、も一つ聞くわ。もし、もしだよ。好きな女が死んだらどーする?

 どーしよーもなく好きで、めちゃめちゃ好きで、やばいくらい好きで。

 って、そんな女。」

「んー・・・泣く。」

「まず泣くな。鼻水だらだらたらして。」

「悲しすぎて泣けんと思う。」

また三つの口が動く。

「そっかそっか。やっぱお前らダチだな。」

「だから気持ち悪りぃっつってんの。なんかあんの?」

茶髪の友達が一人言った。

「いや、お前ら"自分も死ぬ"って言わなかったじゃん。

 それって凄く当たり前のことかもしんないけど、凄く大切なことなんだと思うんだよ。

 もしこん中で一人でもどっかに行ってみろ。

 全く雰囲気が変わるだろ?

 それが永遠に続くとしろよ、どれだけ耐えられないか。

 自分も死んだらこの悲しみから開放される。って一瞬でも思うはずだぜ。

 でもお前らは誰一人そんなこと言わなかった。」

「なんかあったのか?」

「いや、なにもないけど。

 最近ふと思ってたんだ。ただそれだけのことなんだけど。」

「ふーん。お前も結構変わってんな。」

コーラを飲む友人が言う。

「まぁな。ぶっちゃけ言うけど、お前らは一生もんだと思ってる。

 これからも何かしらずーっと付き合ってくだろうし。

 しょうもないこと考える奴らだったら縁切るし。

 それを試しただけさ。」

「なんか・・・空気重くね?お前死ぬなよ。」

一番背のちっちゃい坊主頭の奴が本当に心配そうな顔で俺をのぞく。

「何言ってんだよ、俺は簡単には死なねぇよ。」

「まぁ、そうだろうな。こん中で一番しぶとく生きそうだわな。」

「ははっ。まぁ、生きるよ。」


いつもの溜まり場、俺ん家の近くのガレージで、いつものように円になった今時の高校生4人組。

沈黙が流れる。

それもまた心地よい時間の流れで。



その沈黙を一番に破ったのが皆いっせいに言った一言。

「酒でも飲むか。」



この一言が翌日僕を苦しめることになる。

多分皆同じように苦しんでいるはずだけど。



近くの自動販売機で、周りに人がいないことを確認して一つ一つすばやく買う。

少し涼しくなってきた夏の夜に、4人円になってふざけあう。

笑って、しんみりして、また笑って。

酔いつぶれた一人が勝手にガレージ全力疾走して。

それ見て腹かかえて笑って。

通りすがりの人にバカじゃないの。って顔で見られることもまたおもしろくて。

そんな時間が過ぎて行った。





俺ん家の近くのガレージにて。

今時の高校生四人組。

酒を飲み、酔いつぶれる。

翌日には二日酔い。





そんな青春を歩んでいる。


しょうもなくて、どこか輝く青春を歩んでいる。


僕たちはまた一つ、一つずつ平和を噛み締めている

そして平和を願うのである。



なぜなら、僕たちは生きているから。
































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